個人事業主が不動産を売却した場合の仕訳について解説

不動産売却の仕訳に困っていませんか

例えば、個人事業主で日ごろから帳簿をつけている人でも、初めての不動産売却となると、帳簿にどのように仕訳をしたらいいのか困ってしまうものです。不動産売却は高額の取引になるため、仕訳を間違えると支払う税金が大きく変わってしまいます。

確定申告で問題視されない帳簿を作るためには、この問題を解決しなければなりません。税理士に相談すれば間違いありませんが、できれば自分で何とかしたいと考えている人もいることでしょう。

この記事では、不動産売却に関する費用の会計処理の概要やミスなく確定申告ができるコツを紹介します。

まずは仕訳の基礎知識のポイントを学ぼう

まずは、基礎知識をしっかり把握しておくことが大切です。以下の4つのポイントをおさえて、仕訳についての理解を深めましょう。

  • 建物と土地で消費税が変わる
  • 固定資産売却損益を勘定項目に使う
  • 損益の計算には簿価がポイント
  • 仕訳で記載する日付はどうするか

建物と土地で消費税が変わる

不動産の売却では、建物と土地を一括りにはしません。土地には消費税がかかりませんが、建物には消費税がかかることがあるからです。建物に消費税がかかる場合は事業者として居住用の建物を売却した場合で、個人で売却した場合は、建物も土地も非課税になります。

例えば、不動産会社が居住用の中古住宅を売った場合は、建物には消費税がかかり、土地は非課税です。サラリーマンが居住用の中古住宅を売った場合は、土地も建物も非課税です。ただし、これは居住用住宅ではなく投資用の不動産を売った場合は、売主が個人であっても消費税を支払う必要があるので注意しましょう。

土地 建物
個人の場合の消費税の支払い なし なし
事業者の場合の消費税の支払い なし あり
不動産投資物件の売却の場合の消費税の支払い なし あり

固定資産売却損益を勘定項目に使う

不動産を売ったときには、売上勘定ではなく「固定資産売却損益勘定」を使います。なぜ売上勘定を使わないのかというと、売却代金には税金や控除などが含まれており、不動産の売却益は売上にはならないからです。

売主が個人、売主が法人、投資用の建物の売却など、どのような場合でも、不動産売却の仕訳は固定資産売却損益勘定を使うということは共通しています。

損益の計算には簿価がポイント

損益の計算には「簿価」がポイントになります。簿価とは、不動産を購入したときに支払った金額です。建物は築年数が経つごとに不動産の価値は減少して値下がりしますが、帳簿に記載する簿価はずっと変わりません。例え土地の価値が上がって購入時よりも値上がりしたとしても、簿価はそのままです。

簿価と相反するものが「時価」となります。時価は不動産の市場価格です。築年数が経って建物の価値が減少し値下がりした場合は、その値下がりした価格が時価となります。土地の価値が上がって値上がりした場合も、その値上がりした価格が時価です。また、時価は景気の影響を受けて価格が変動することもあります。

仕訳で記載する日付はどうするか

不動産の売買を事業年度をまたいで行った場合は、仕訳で記載する日付に注意しましょう。仕訳で記載する日付は、契約書を作成した日、実際に不動産を引き渡した日、不動産の売却の契約を締結した日のいずれかです。

例えば、4月1日から翌年の3月31日を事業年度としていた場合、契約書を作成した日が3月、不動産を引き渡した日が翌月の4月になった場合、事業年度をまたいでいることになります。この場合、どちらの日付を記載するかで、その年の利益や税金が大きく変わるので、よく考えて日付を選択することが大切です。

不動産の売却が会計処理に含まれると、その分資産額が増加し、税金の支払いも増えます。その年の税金を抑えたい場合は、会計処理が翌年度になるように仕訳の日付を記載しましょう。

よくある不動産売却5パターンを仕訳しよう

どのように仕訳をするのかが具体的にイメージできるように、よくある不動産売却の仕訳例を紹介します。紹介する例は以下の5つのパターンです。

不動産売却の仕訳例

・簿価より高く土地と建物を売却した場合

・簿価より安く土地と建物を売却した場合

・建物の売却額のみ簿価より安かった場合

・土地の売却額が簿価より高かった場合

・土地の売却額が簿価より安かった場合

簿価より高く土地と建物を売却した場合

以下は、簿価400万円の土地を500万円で売り、簿価300万円の建物を400万円で売った場合の仕訳例です。

借方 貸方
現金:861万円 土地:400万円
支払手数料:39万円 固定資産売却益:100万円
建物:300万円
固定資産売却益:100万円
仮受消費税(8%):32万円

土地の売却代金は非課税売上、建物は課税売上となります。支払手数料(仲介手数料)は「売却額×3%+6万円」で計算しており、消費税は8%の価格です。

  • 課税売上:建物の価格300万円+建物の固定資産税売却益100万円=400万円
  • 非課税売上:それ以外

簿価より安く土地と建物を売却した場合

以下は、簿価400万円の土地を300万円で売り、簿価300万円の建物を200万円で売った場合の仕訳例です。

借方 貸方
現金:476万円 土地:300万円
支払手数料:24万円 建物:200万円
固定資産売却損:100万円 土地:100万円
固定資産売却損:100万円 建物:100万円
仮受消費税(8%):16万円

支払手数料(仲介手数料)は「売却額×3%+6万円」で計算しています。土地は非課税、建物の売却損は非課税です。

  • 課税売上:建物200万円
  • 非課税売上:それ以外

建物の売却額のみ簿価より安かった場合

以下は、簿価400万円の土地を500万円で売り、簿価300万円の建物を200万円で売った場合の仕訳例です。

借方 貸方
現金:695万円 土地:400万円
支払手数料:21万円 固定資産売却益:100万円
固定資産売却損:100万円 建物:200万円
建物:100万円
仮受消費税(8%):16万円

支払手数料(仲介手数料)は「売却額×3%+6万円」で計算しています。そしてこちらの例も、土地は非課税、建物の売却損も非課税になることがポイントです。

  • 課税売上:建物200万円
  • 非課税売上:それ以外

土地の売却額が簿価より高かった場合

以下は、簿価1,200万円の土地を1,300万円で売った場合の例です。

借方 貸方
当座預金:1,300万円 土地:1,200万円
固定資産売却益:100万円

土地は非課税対象になります。こちらの例では、仲介手数料の記載がありませんでした。個人同士の売買などでは、仲介手数料がないケースもあります。

  • 課税売上:なし
  • 非課税売上:全て

土地の売却額が簿価より安かった場合

以下は、簿価350万円の土地を250万円で売った場合の例です。

借方 貸方
現金:238万円 土地:350万円
支払手数料:12万円
固定資産税売却損:100万円

売上高が200万円超400万円以下の場合は、仲介手数料が「売却額×4%+2万円」で計算します。そのため、「250万円×4%+2万円=12万円」となりました。こちらの場合も、土地の売却だけなので税金の支払いはありません。

  • 課税売上:なし
  • 非課税売上:全て

 

不動産売却の諸費用の仕訳について

諸費用の仕訳を記載する際には、確認すべき点や知っておいたほうがいい点があります。以下に紹介することも覚えておきましょう。

仲介手数料の仕訳方法

不動産の取得は非課税仕入ですが、仲介手数料は課税仕入なので、消費税がかかります。不動産売却にかかる費用は高額なので、消費税がかかると税金の負担も大きいです。事前にしっかりと確認しておきましょう。

資料で確認する際には、税抜表示のものもあれば、税込表示のものもあるので、金額を間違えないように注意しなければなりません。実費がいくらになるのかを細かく確認することが大切です。

手付金の仕訳方法

不動産売却の際には、買主は売主に手付金を支払うケースがほとんどです。後にその手付金は売買代金に充てられることになります。手付金の額は、一般的に5%~20%程度が多いです。また、手付金には「証約手付」「違約手付」「解約手付」の3つの役割があることも知っておきましょう。

証約手付 売主と買主の間に契約が成立した証拠を意味する手付金です。不動産売却時に買主から売主に支払われます。
違約手付 買主または売主のいずれかに債務不備行があった場合に支払われる手付金です。あくまでも違約金で、損害賠償ではありません。
解約手付 売主が手付金の2倍の額を買主に支払った場合、その契約を解除できるという意味がある手付金です。他に、買主が手付金を放棄した場合も契約を解除できます。

買主と売主とでは、手付金の仕訳が違うことに注意が必要です。買主は不動産の売却額の一部を手付金として支払うので「前払い金」という資産勘定で記帳し、売主は買主から売買代金の一部として手付金をもらうので「前受け金」という負債勘定で記帳していきます。

なお、手付金は代金の一部を支払う内金とは違うものです。はっきり区別するために、「支払い手付勘定」という勘定項目で処理することもあります。

固定資産税の仕訳方法

固定資産税の会計処理をするにあたり、固定資産税清算金のことも知っておくべきです。この2つは、経費計上する会計上の処理に違いがあるので、以下の表を見てその違いを確認しておきましょう。

固定資産税 固定資産税清算金
意味 不動産を持っている限り毎年支払わなくてはならない税金 物件売買時に期間に応じて固定資産税を日割り計算し、買主が引き渡し日当日以降の分担額を売主に支払うこと
精算処理 全額経費計上できる 不動産売買時には即全額経費計上できず減価償却の対象となる

なぜ固定資産税清算金は、即全額経費計上できないのかというと、「不動産売買額に固定資産税精算金を上乗せした金額が売買金額になる」という決まりがあるからです。

個人と法人での仕訳方法の違い

個人と法人では、収益の考え方に違いがあります。まずは、その違いを明確にしておきましょう。

個人 法人
・1年間でどのように収入を得たかにより、所得を分けて計算する。
・所得金額の計算や税金の計算も所得の種類によって異なる。
・種類に関係なく、すべての収入と経費を合算し、その合計額から経費を差し引いて利益を算出し、税金の計算をする。

この違いを踏まえて、次に仕訳方法の違いを具体的に説明していきます。

法人の場合

法人の場合は、収入の種類が異なっていても、すべての収入を合算してから経費を差し引き、算出された利益に対して税金が課されます。この税金が適用される金額が課税所得です。一般的に法人の税率はこの課税所得と資本金で決定します。

資本金が1億円以下の場合は、課税所得年800万円以下で15%、課税所得年800万円超で約23%の税率です。資本金が1億円超の場合は、約23%の税率が適用されます。

個人の場合

個人の場合の収入は法人のように合算できないので、収入の種類をそれぞれで分けて計算します。所得金額の計算や税金の計算も、所得の種類によって違うので、収入が発生した際は適切な種類に仕分けをしなければなりません。

例えば、不動産売却で得た収入は譲渡所得、事業から得た収入は事業所得、不動産売却活動の経費は譲渡所得の経費、事業のための商品仕入れは事業所得の経費などのように仕訳します。

不動産会社選びはミスのない会計処理・確定申告につながる

一般的に個人事業主が不動産売却を行う機会はあまりなく、通常は専門家による助言や助力が必要です。また、不動産売却活動は不動産を売却した時点で終了と捉えず、確定申告まで続くと捉える必要があります。

適切な会計処理や確定申告ができるか否かは、不動産売却活動でタッグを組んだ不動産会社が、クライアントに対して適切な事務処理・助言をしていたかが大きなポイントです。そのためにも、不動産会社選びは重要なので、査定一括サイトを活用するなどして信頼できる不動産会社を探しましょう。